月日経ち、ガキがついにやってきた。 | |
月日経ち、ガキがついにやってきた。どこの世のものでもないような清らななりをしやがっていて、ゆゆしいことに思った。 明くる年の春、坊が定まりやがった、引き越してやりたいが、後見人がいるわけでもなく、世のうけひくこともなかろうから、危く思い憚って、色にも出さなかったが、「あれほどお思いになっても、限りがあるものだ」と、野郎どもも云い、女御も心落ちつけた。 ガキのばあさんの北の方は、慰む方なく思い沈んで、ガキの居る所に尋ね行かんと願っていたが、つひに亡せやがったから、またこれを悲しみは限りはなかった。ガキが六つになりやがった年で、このたびは思い知って恋い泣きやがる。 年ごろ馴れ睦んでおりましたが、見て置く悲しびをどうすべきかしら、 と返す返す云い死にやがった。 |
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