5.近き御厨子なる色々の紙なる文どもを引き出でて、私がわりなくゆかしがると | |
つれづれと降り暮らして、しめやかなる宵の雨に、殿上にもをさをさと人少なに、御宿直所も例よりはのどやかなる心地するに、かの君、大殿油近くて書どもなど見ながら、近き御厨子なる色々の紙なる文どもを引き出でて、私がわりなくゆかしがると 「済んでるものは、すこしは見せるよ。かたわな物もあるから」 と、許し流されてわたしのほうでは、 「このうちで、とけてかたはらいたしと思われてるのこそがゆかしくありましょう。おしなべたる大方のは、数にならないし、程々につけて、書き交はしつつも見慣れてはおりますので。おのがじし、恨めしき折々、待ち顔した風な夕暮れの事などをこそ、見所がありましょう」 |
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