5.儚き身ひとつで、あいつはもの思いやがっていた。つぼねは桐壺だ | |
俺のおかげだけたよりにして、まわりは咎をもとめ貶めやがろうという奴が多く居る中、か弱い、儚き身ひとつで、あいつはいつももの思いにふけっていやがっていた。 つぼねの場所は桐壺だ。 いろんな奴らをすぎ分けて、たびたびのハビタス渡りに、奴らの心づくしがありやがるのも、ことわりとみたらそうなのかもしれない。俺の夜のハビタスがあいつでいっぱいになった日には打橋、渡殿にやばいことをしかけやがるやつもいて、送り迎えする奴の裾がたえがたいことになって台無しなんてこともあった。 馬道の戸をさしこんで、こなたかなた奴らが心あわせして、あいつが、はしたないことになって煩わされるなんて事も多くなった。事にふれりゃあ、かず知らず苦しい事ばかりが思い出される、俺が思い詫びるところで、あいつの事を気にかけて元々後涼殿にいやがった更衣のつぼねを、他に移させてそこを上つぼねにしてやったりするが、そうしたところであいつへの恨みつらみがどこかへ移るわけでもなかった。 |
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