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最新更新日時: 2017年09月30日 13時06分
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名画を見る眼 (岩波新書) | |
自然に忠実にあろうとすれば、画家は、当然のことながら多彩な自然の輝きをそのままカンヴァスの上に再現しなければならない。それは、従来の対象固有色と明暗という手段では、とうてい表現しえないものであった。そのため、モネたちは、自然の輝きを画面に定着させる独特の」技法を生み出した。「筆触分割」ないしは「色彩分割」と呼ばれるやり方がそれである。 それは、太陽の光を構成するプリズムの七色を基本とし、しかもそれらをおたがいに混ぜないで使用するという技法といちおう規定することができよう。プリズムの七色は、言うまでもなく自然の多彩な輝きを生み出すもととなるものであり、また「混ぜない」といいうことは、自然の明るさをカンヴァスの上でも保証してくれるものだったからである。 事実。印象派の画家達が早くから気づいていたように、絵の具の色は、混ぜれば混ぜるほど明るさが失われ、画面は暗くなる。七色の虹の光は、全部混ぜ合わせると明るい白色光線になるが、同じ七色の絵の具をパレットの上で混合させると、結果は黒になる。つまり、絵の具は混ぜれば混ぜるほど暗くなるので、明るい自然を再現するためには、なるべく「混ぜない」ようにしなければならない。しかし、自然の微妙な色調の変化を再現するためには、どうしても中間色、すなわち混合色が必要となる。そこで印象派の画家達は、現実には絵の具を混ぜないで、しかも見た目には混ぜたと同じ様な効果を示すやりかたとして、混合すべき色を小さなタッチ(筆触)でカンヴァスの上に並置するという方法を採用した。たとえば、赤と青のタッチを並べて置くと、離れた所から見た時、双方の色がいっしょに目にはいって紫色に見えるというわけである。こうすれば実際の絵の具は原色のまま使われているから明るさは失われず、しかも視覚的には、ふたつの色を混ぜたのと同じ効果が得られる。後にフェネシオンやシニャックのような印象派の理論家たちが強調するように、混合はパレットの上ではなくて網膜の上で行われるのである。自然を基本的な色に分解し、そのひとつひとつの要素をばらばらに並置して、全体としてまとまった効果をあげるというこの方法が「筆触分割」にほかならない。 |
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