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最新更新日時: 2011年12月31日 18時06分
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鹿鳴館青きドナウだ菊の花 (芥川龍之介 舞踏会) 
「西洋の女の方はほんたうに御美しうございますこと。」  海軍将校はこの言葉を聞くと、思ひの外真面目に首を振つた。 「日本の女の方も美しいです。殊にあなたなぞは——」 「そんな事はこざいませんわ。」 「いえ、御世辞ではありません。その儘すぐに巴里(パリ)の舞踏会へも出られます。さうしたら皆が驚くでせう。ワツトオの画の中の御姫様のやうですから。」  明子はワツトオを知らなかつた。だから海軍将校の言葉が呼び起した、美しい過去の幻も——仄暗い森の噴水と凋(すが)れて行く薔薇との幻も、一瞬の後には名残りなく消え失せてしまはなければならなかつた。が、人一倍感じの鋭い彼女は、アイスクリイムの匙を動かしながら、僅にもう一つ残つてゐる話題に縋(すが)る事を忘れなかつた。
>>(芥川龍之介 舞踏会)
作成: 2010年01月11日 18時23分 / 更新: 2011年02月19日 18時52分

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