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最新更新日時: 2011年12月31日 18時06分
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オランダの妻と日本で和解して 青野聡 愚者の夜
青白い夜が波のように寄せてはかえしている。障子の外を吹いているのは世界地図にはのっていない幻の国土からの風だ。時間は二人が吐きだす毒のせいか腫れぼったい。どん・どどん・どん・・どんどん・・どん・どどん・どどん・どん・どん。闇にうがった穴ぼこの底からかすかに太鼓の音がひびき、犀太はもっとよくきこうと試みるだけで穴ぼこに吸いよせられて頭から落ちそうになる。いけないいけないとおもい、のめりこむ身をひきもどそうとするうちに、いつもの映像がみえてくる。——メガホン型とも火山型ともいえる黒い巨大な筒が天にむけて立ち、麓を蟻よりも小さな人間の列が、靴をキュッキュと鳴らせながらやってきて、ひとりふたりと側面の梯子をよじのぼる。そしてさかさまに落ちこむ人は声もなく、凍りついたのか瞼も広げた指もつっぱって、ただ吸いこまれて落ちてゆく。二度ととまることもなく、おそらく、明日もあさっても来年も暗い広がりのなかを落ちてゆく。またひとり、ようやく口のへりまでのぼった者が空を飛ぶようにとびおりた。  天体のどこの片隅にこんな苦しげな広がりがあるのだろう。砂漠や曠野やアンデス山中で仰ぎみる夕暮れのまっさおな闇、あれが宇宙の正門だとすれは、これはかえりみられなくなってから久しい朽ちはてた裏門にちがいない。うつぶして両手を窓の下の壁ぎわまでのばしていた犀太は、クロールで息を吸うように顔をあげて右目でジニーを盗みみた。
(愚者の夜)
タグ: オランダ 結婚 外国人妻
作成: 2010年01月11日 18時05分 / 更新: 2011年02月19日 18時52分

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