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最新更新日時: 2017年09月30日 13時06分
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定本 言語にとって美とはなにか〈1〉 (角川ソフィア文庫)
(1) ある時代の文学表現は、いつも話体と文学体とのふたつを基底としてかんがえることができるし、かんがえるべきである。これは、〈書く〉ということによってうまれる表出の、表出と表現への分裂という意味を誤解しなければ、文字の成立する以前にもさかのぼってかんがえることができる。
(2) 話体の表出は、もしそれを無条件の必然としてかんがえるかぎり、文学体の方へ上昇する。話体表出を話体表出として持続するのは、意識的な思想によるほかはない。それ以外では、文学体への上昇か、話体としての風化、いいかえれば通俗小説化するほかはない。
(3) 文学体は、無条件の必然としては、より高次の文学体へと上昇する。文学体が話体へむかって下降するばあいは、作家の意識的な転換であるほかはなく、この転換をうながすに足りる現実的な要因が、かれの個的な時代的な基盤のなかにあったときである。
(4) 現代において話体を風化もさせず、また文学体への自然な上昇をもおこなわずに持続している作家は、かならず現実放棄の思想をもっている。
(5) ある時代から次の時代への表出体の転移は、話体と文学体との上昇や下降の複雑な交錯によって想定される言語空間のひろがりと質の転移によっておこなわれる。これは、文学体と話体とが極端に張り出した幅とひろがりとしてあらわれるはあいも、話体と文学体との融和のように、あるいは区別できないまでの接近としてあらわれるばあいもある。これと対応づけられるのは言語の表現意識の水準と現実社会の総体的な要因とである。が、それがすべてではない。その他の対応は、不完全であるばかりでなく、対応させることが困難である。
(6) 表出史は現実史へ還元することができない。還元できるのは、意識の表出としての一般性であり、〈文字〉により〈書く〉という形での表現は現実への還元をゆるさない。ただ〈書く〉ということの一般性へ還元されるだけである。 (7) ある時代の表現を、はじめに次の時代へ転移させるものは、必ず文学体の表現である。これからもそうである。
>>(話し言葉の時代: マーケティング・クオリア)
作成: 2009年12月09日 22時07分 / 更新: 2011年01月09日 10時01分

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