コモンウェルス
by 佐藤清文
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最新更新日時: 2011年02月01日 06時25分
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2.日本とヨーロッパには奇妙な平行現象があって考えやすい。
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「日本とヨーロッパには奇妙な平行現象があって考えやすい。どちらも本格的な中世がなくて、ルネサンスがある。西洋史では扱わぬが、日本史なら江戸時代をさす近世という概念が、ルネサンスと近代とのつなぎに便利。中国やペルシアのような本格的な中世になるとこうはいかぬ。長安やバグダッドは別世界としか思えぬ」(森毅『時の渦』)。
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3.解放された世界 (岩波文庫)
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「西暦(Anno Domini)」ならびに「世紀(Century)」の世界化が一九世紀以降の時代の気質を示している。“The history of the calendar throughout the world is a history of inadequate adjustments, of attempts to fix seed-time and midwinter that go back into the very beginning of human society”(Herbert George Wells “The World Set Free”).
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4.暦は政治的・経済的・社会的な習慣・制度を規定する。
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暦は政治的・経済的・社会的な習慣・制度を規定する。キリスト教の暦にすぎない西暦が世界化している現状は欧米の世界に対するヘゲモニーの獲得を反映している。西暦は、スキティアの修道院長デュオニュシウス・エクシグウスが五二五年に定めた受肉紀元に由来する。キリスト生誕を時間の中心に据え、それ以前と以後に分け、西暦年数が四で割り切れる歳を閏年とするが、一〇〇で割り切れる年については、その商が四で割り切れる場合のみ、閏年とする。四〇〇年間に閏年を九七回制定するというこの暦は、復活祭の日が一定期間内からずれないことを目的としている。
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5.東方正教会では、現在でも、復活があってイエスはキリストたりえるという理由から、クリスマス以上に復活祭を重視している。
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東方正教会では、現在でも、復活があってイエスはキリストたりえるという理由から、クリスマス以上に復活祭を重視している。”A lot of people say to me, ‘Why did you kill Christ?’ ‘I dunno... it was one of those parties, got out of hand, you know.’ ‘We killed him because he didn't want to become a doctor, that's why we killed him’"( Lenny Bruce).
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6.キリストの誕生と復活が人間の時間観念を規定する。
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キリストの誕生と復活が人間の時間観念を規定する。ユダヤ歴では神の仕事が反復されるのに対して、西暦は単独的なキリストの存在を繰り返す。グレゴリオ暦と結びつけ、キリストの誕生を時間の中心に定めることにより、一七世紀頃から、創世などさまざまな解決困難な問題を回避できるため、ヨーロッパ全体に定着する。
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7.もっとも、この暦にしてもかなり怪しい。
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月の最終日の不規則さなどといった常用暦としてのグレゴリオ暦の欠点を修正しょうと何度か試みられているが、一般にはあまり浸透していない。もっとも、この暦にしてもかなり怪しい。イエスの誕生日を一二月二五日とした理由もさまざまに検討されているけれども、その一週間後に次の年に変わるというのは創世記の冒頭を踏まえているというのは間違いないだろう。
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10.これにより、世界は、歴史上初めて、統一される。
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その暦はグリニッジ天文台を基準にした世界時刻によって運用されている。一八八三年にグリニッジ平均時が導入され、次第に、世界標準時刻になっていく。これにより、世界は、歴史上初めて、統一される。これは、古代ローマ人も、モンゴル人も、なしえなかった事業である。
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11.時間・空間は資本主義化=均質化されなければならない。
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時間・空間は資本主義化=均質化されなければならない。資本主義と国民国家体制が浸透していくにつれて、ヨーロッパの暦が世界を支配する。“I’ve been on a calendar, but never on time”(Marylyn Monroe).二〇世紀は一九世紀に提起された諸問題に対する解答に追われてきたのであり、一九世紀と対象的な関係にある。
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12.物価も金利も傾向的下落を続けながら、世界同時不況に入っていくのだ。こうして長期停滞局面がやってくる。
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金子勝は、『長期停滞』において、パックス・ブリタニカとパックス・アメリカーナには長期停滞状況を招いた点で共通点があると次のように述べている。パクス・ブリタニカにせよパクス・アメリカーナにせよ、長期停滞局面に入る時には、ある種の共通性が見られるからだ。まず、世界経済の中心にいる覇権国の産業競争力が衰退して、覇権国が恒常的な貿易赤字状況に陥り、国際通貨体制の動揺が始まる。覇権国は金融ビジネスを通じた資本収支の黒字で、それをカバーしようとする。その過程で、国際金融市場のヴォラティラティ(浮動性)が高まり、バブルとバブル破綻の波動が繰り返される。そして、物価も金利も傾向的下落を続けながら、世界同時不況に入っていくのだ。こうして長期停滞局面がやってくる。
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